愛犬家への贈り物におすすめの「犬との時間」。カタログ内の多くの撮影を手がけたフォトグラファー岸本咲子さんにインタビューしました。ワンちゃん大好きエピソードと、ちょっといい話です。発売からだいぶ時間が経ってしまいましたが、ようやく準備ができましたので公開できます。(構成/関口昌弘=ソウ・エクスペリエンス)


「犬との時間」のカタログには、かわいいワンちゃんと、一緒に過ごす楽しそうな飼い主の方が一緒に写っています。多くの写真を撮ってくれたのが、フォトグラファーの岸本咲子さんです。

 人物撮影が得意な岸本さんですが、大の犬好きだという話を聞き、ソウ・エクスペリエンスはぜひお願いしたいと依頼をしました。

 実はそのとき、岸本さんがかわいがっている実家のワンちゃんが病気になり、大変な時期だったそうなのです。しかし不安な様子は全く見せず、快く引き受けてくれました。

 岸本さんは、この撮影をとおして改めて、犬と一緒に過ごす時間がいかに大切かを気づかされたといいます。犬を飼っている方は、きっと共感していただけるはず。インタビュー記事にまとめましたので、お読みください。

 犬との時間、大切にしましょう。

ワンちゃんLOVEと自覚した瞬間

――今回はありがとうございました。岸本さんの、犬の表情へのこだわりはすごかったですね。犬愛を感じました。

岸本さん この商品は「犬との時間」ですよね。ソウ・エクスペリエンスさんのオーダーでは、飼い主とワンちゃんとの幸せそうな時間を切り取ってほしいということでしたので、ワンちゃんの表情もそうですが、飼い主さんの表情にもこだわりましたよ。セレクトになかなか骨が折れました。

――確かに、みなさん楽しそうな表情ですよね。それにしても、ワンちゃんかわいいですよねえ。ぼくは飼っていないのですが、撮影に同行して欲しくなっちゃいましたよ。岸本さんは、なんで犬が好きになったんですか。

岸本さん それ、長くなりますけどいいですか(笑)。

――は、はい。大丈夫ですよ。

岸本さん それでは(ゴホンッ)。えー、話は私が小学生だったころまでさかのぼります。もう、うん年前ですね。そのころ、親の転勤で大阪に住んでいて、近所のガレージに2匹の犬がいたんです。2匹とも中型の雑種で、ふわふわした毛の長い白い犬と、日本犬らしい黒い犬でした。近所のお友達に「名前は、シロとクロだよ」と教えてもらいました。

 通学路にあって、行けば触れるような場所だったので、たくさん通って。とにかくかわいくて、私が住んでいた家は飼えなかったので、引っ越したら私もいつか飼いたいなあと思っていました。

――なるほど。近所の犬に接して、犬好きになるという人は多そうですね。

岸本さん そうですね。でも、それだけだったら、ここまでの犬好きにはならなかったのかもしれません。さらに、犬ってすごい動物なんだ!と思わされる出来事があったんです。

――というと。

岸本さん 遊びに通っていると、シロとクロの性格が分かったような気がしてくるわけです。「シロ、おいで」と言うと、白は人懐っこく来てくれるけれど、「クロっ」と呼んでも、黒はツンとしていてつれない感じ。どちらもそれはそれでかわいいなと感じました。

――確かに。そういうのがあるかもしれません。

岸本さん さらにその先があるんです。ある日、いつも通りに遊びに行くと、ガレージに飼い主さんが書いた張り紙が貼ってありました。

“いつも僕たちのことをかわいがってくれてありがとう ルビー&ランディ”

 私、そこで数年越しに、はじめて本当の名前を知って。そんな立派な名前があったのか!と、それはもう衝撃を受けたわけです(笑)。で、早速呼んでみたんですね。

「ルビー」って呼ぶと、白がいつもどおりの人懐っこさで来てくれました。次に「ランディ」って呼んでみると、それまでつれなかった黒が、表情をくずして、なんと同じように寄ってきてくれたんです。

 そこで気づきました。なんと黒、つまりランディは、自分の名前を呼ぶ人にしか寄ってこない、とても賢い犬だったんです。一方の白、ルビーは、まったく違う名前で呼ばれても、誰にでも寄っていくちょっとおバカなヤツだった(笑)。これが分かったときに、なんて面白いんだろうと思いました。クロはつれないやつって思っていた私があさはかでした(笑)。

 このことで犬の奥深さを知って、かわいいだけではない、コミュケーションが取れる相手としての魅力に引き込まれ、特別な存在になりました。

――ランディ、すごいですね。ルビーは憎めない(笑)。確かに魅力は、その犬によってそれぞれありますね。

岸本さん 子供心に衝撃的でしたね。それからとにかく犬を飼いたいという思いが強くなって。東京に帰ってきて犬が飼える家に引っ越したときに、念願がかなうわけです。

――やった!

岸本さん いまから13年前ですね。初めて飼った犬です。

マルチーズの女の子を指名、ところがなんと……

――どうやって出会ったんですか。

岸本さん まず家族で話し合いました。「犬を飼うということは、新しい家族を迎えるってことだよね」と話し、それだと男の子というよりも、女の子がいいなと一致しました。我が家は姉妹だったので、男の子を迎えるイメージがわかなかったんです。

 犬種はマルチーズがいいと、最初から思っていました。白い犬には、大好きだったルビーのイメージもあったかもしれません。それで女の子のマルチーズを探しました。

 何軒か回って、なかなかしっくりくる子がいなかったのですが、ある時、ぴょんぴょん飛び跳ねて猛烈にアピールする子に出会いました。その姿を見て家族は満場一致。すぐに手続きに入りました。

――よかったですね!

岸本さん いやいや。ここで一波乱ありました。書類を書いているときに、奥からスタッフの方が泣きそうな顔をしてやってきたんです。

 実は、連れてこられたその犬は、女の子ではなくて男の子だったんです。スタッフさんは、ものすごい勢いで謝ってくれました。私たちは一瞬戸惑いましたが、少し相談して、「でも、この子が気に入ったので大丈夫です!」と、そのまま手続きをしました。

 ペットを飼っている方はみなさんそうだと思いますが、こればかりは縁というか「ピンと来る」ということがあるんですね。それまで男の子を飼うことはまったく考えられなかったけれど、家族全員が「この子がいい」と思えたので、問題ありませんでした。それがこのレンくんです。

女の子かと思いきや……

――一波乱というか、大波乱ですね。

岸本さん そうですね(笑)。でも今では、違う犬を飼っていたかも、ということは考えられないほど、大切な家族の一員です。私はもう実家を出ていますが、レンのことはずっと気にかけていますし、会いに行くと、いつも喜んで迎えてくれます。しかし、今年のはじめに、思いもよらないことがあって……。

何気ない時間が、かけがえのないものだと気づいた

岸本さん 実はレンが、ちょっと重い病気をしてしまったんです。子犬の頃から、元気だけが取り柄のような明るい子で、今まで体調を崩したことは一度もありませんでした。その分、突然歩けなくなり、獣医さんに「数日が峠になるかもしれない」と言われた時は、家族中がショックを受けました。

 いろいろな治療を受けて、幸いにも現在はこの通り元気なのですが。このとき改めて気づきました。レンくんと過ごす時間には、限りがあるんだなと。当然それまでも、頭では分かっていたんですが、本当に実感したのはこのときが初めてでした。当たり前の時間が、どれだけ貴重なものなのか身にしみました。

 ソウ・エクスペリエンスさんから依頼をもらったのは、治療をしている真っ最中だったんです。最初はちょっととまどいましたが、そんな時だったからこそ「飼い主さんとワンちゃんとの大切な時間を切り取ろう」と、とても力が入ったんです。この商品を通じて、ありふれた時間を、ちょっとだけ特別な時間にするお手伝いができたら良いなと思いました。

――そうだったんですね。知りませんでした。しかしレンくん、今はめちゃくちゃ元気そうですね。良かった。

岸本さん そうですね。でも、もうかなりシニア犬ですから。大事に過ごしたいと思います。今回の商品が、どなたかのワンちゃんとのかけがえのない時間を演出できたら本当にうれしいなと思いますね。

PROFILE

岸本咲子
1982年生まれ。NY州立大学 FIT Photography Department単位取得留学後、2006年成蹊大学を卒業。大手IT系制作会社勤務を経て、フォトグラファーとして独立。現在は雑誌やMOOK、ウェブサイト、企業向け撮影などを中心に活躍中。
http://www.sakikokishimoto.info/

AUTHOR

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関口昌弘
出版社の雑誌やWEBサイトの編集部を経て、2012年10月にソウ・エクスペリエンスに入社。2013年があっという間で覚えていません